パドックの見方

競馬場パドック 馬主関係者や当社情報ルートは、パドックと返し馬を見た後で馬券を買っています。また、古くからご参加の会員様も、「極力、パドックは見るようにしている」という方が多いようです。

しかしながら、「専門家じゃないから、パドックでどこをどう見ればいいのか分からない」という方もいらっしゃるでしょう。そんな方々に、より深く競馬を楽しんでいただけるよう、ココでは『パドックを見る際のポイント』を紹介させていただきます。

ココで挙げられるポイントを押えた上で『パドック』を見て頂ければ、一般紙では全くの無印で注目されていない馬の激走を読むことも…。是非とも今後の取捨選択の参考にして下さい。


場所・比較

パドックで馬を見る場所の基本は、馬体全体が捉えられる位置です。できればチェックする箇所によって近付いたりするなど、移動するのがいいでしょう。また、以下のポイントは基本として押さえておいてください。

真横から見る

歩様や腹回り、全体の仕上がりを確認するため。

いつも同じ位置から見る

見る馬体の箇所に応じて遠近調節はするが、位置が同じ方が比較がしやすくなるため。

逆光は避ける

毛ヅヤや皮膚の状態がわからなくなるため。


また、パドックでは個々の馬の比較が重要となります。

縦の比較

1頭の馬に対し、前走、前々走…と過去出走した時との状態を比べます。好調時や凡走時の仕上がりや気配、癖などのパターンを把握しておけば、自ずとその馬の買い時がわかるからです。また、絶好調時から比較し、どこが劣ると割り引いていく『引き算方式』でも判断することができます。

横の比較

全ての馬で【縦の比較】ができるに越したことはありませんが、星の数ほどいる馬1頭1頭の馬体を把握するのは不可能といっていいでしょう。そうであるなら、そのレースで有力となる馬(当社の情報馬や各クラスの上位馬、自分の狙い馬)を決めて判断基準とする方法があります。その馬と他馬とを見比べ、順位をつけて行くのです。

【縦の比較】から【横の比較】を行うという順序も忘れてはいけないポイントです。

場所・比較

パドックとは馬の状態を見るだけでなく、その馬の潜在能力を見ることができる場でもあります。状態の良し悪しは競走成績に反映する重要なファクターですが、やはり絶対能力が優れていれば状態が悪くとも勝てる場合があるのです。ここでは、どういう馬が『良い馬』なのかの判断材料を挙げていきます。

骨格を見る

骨格がしっかりした馬は馬格(馬体重)が大きい馬が多いです。骨格は馬の土台であり底力にも影響します。牡馬であれば、最低でも450キロ位の身体は欲しいところでしょう。

四肢を見る

脚が曲がっている馬はスムーズに走りにくく、故障が発生しやすいです。パドックで脚を見る際には、前後から見て、まっすぐ脚が伸びている馬が良いでしょう。

トモをじっくりと見る

トモ(尻と後脚)は人間の足腰と同じようなものです。尻が大きく幅があり、ドッシリとした馬は瞬発力やパワーに優れていると言えます。

全体的なバランスを見る

感覚にはなりますが、美しく見える馬や歩く姿に柔らかさがある馬はプラスにとっていいでしょう。

馬の表情を見る

走る馬の表情は、『賢くて素直な顔立ち』と『大きく優しい目』をしています。当社最高顧問の境勝太郎元調教師も「サクラユタカオーには賢さや素直さが顔に出ていたが、レースになると別馬だった」と語っていました。


これらはあくまで基本的な見方であり、勿論、走る馬には例外がいます。ただ、力関係が掴み辛い新馬戦などでは、大きな判断材料の一つになるでしょう。

夏場と冬場

基本的に馬は暑さに弱い動物であり、夏には決して強くはありません。そのため、暑さにやられてしまう馬も出てきます。

目の周りが黒い

睾丸が大きくなり垂れ下がる(牡馬)

全く汗をかかない

これらの症状が表れた馬は“夏負け”していると判断できます。基本的には「マイナス」と考えていいでしょう。

冬場は汗のかかない時期である為、馬体が減らず太目残りに見える馬も出走してきます。しかし、その馬がキッチリと調教を積んでいれば、それほど気にする必要はありません。また、冬毛も馬の自然の生理現象なのであまり気にする必要はありませんが、手入れの仕方が厩舎の仕上げの判断基準にもなるので、注目してみてください。

表情・目

『目は口ほどに物を言う』という言葉がありますが、物言わぬ競走馬であれば尚更です。
熟達すれば「表情だけで瞬時に状態がわかる」と言われる程、重要なポイントとなります。

良い

目が生き生きとしている…好調で気合の入った馬は、眼力があり精悍な顔立ちをしています。具体的には、目が澄んでいて鋭い光を放っているような馬です。白面やメンコ着用の馬など表情が判りにくい馬でも、目を見れば判断は出来ます。

鼻の穴が大きい…鼻の穴が大きいと吸い込める酸素量が多いので、心肺機能が高いのです。

悪い

うつろな目をしている…覇気のない証拠です。『縦の比較』からでもわかりますが、状態が下降線の馬は眼力も弱くなっていきます。

白目を向いている…気性が悪い馬に多くみられます。この状態でも力を出せる馬はいますが、プラス材料とは言えません。

目が血走っている…目の周囲の血管が浮き出ている状態のことを指します。この場合は興奮状態であり、能力を出し切れないでレースを終える可能性が高くなります。

耳を絞っている…耳を後ろ側に倒している状態のことを指します。馬が警戒している状態で、神経質や音に敏感な馬に多く見られます。こういった馬は精神的に不安定な可能性が高く、注意が必要です。

毛ヅヤ

その馬の体調の良し悪しが顕著に表われるのが毛ヅヤです。人間の場合、その健康状態を顔色で伺い知ることが出来ますが、馬の場合、それを毛ヅヤから判断します。

良い

肌が輝いている…しっかりと手入れが行き届いていて、血行が良い証拠。

皮膚が薄い(血管が浮き出ている)…新陳代謝が活発で、内臓が強い。

悪い

肌がくすんでいる…手入れが行き届いていない状態。よって、血行も悪くなります。

皮膚が厚い…新陳代謝が活発ではなく、内臓にも不安がある場合が多いです。当然、見栄えも悪くなります。

ただし、冬場になると冬毛が出てくる為、毛ヅヤから体調の良し悪しを判断するのは難しくなります(勿論、きっちりと手入れされている馬は冬場であっても馬体は輝いています)。また、毛色によって(特に芦毛の馬)は毛ヅヤの良し悪しを判断しづらいので、注視してください。

踏み込み

『走る馬』は関節や筋肉が柔らかく後脚のキック力があります。状態の良い馬、走る馬を見極めるのに、パドックでは踏み込みを見ることも重要です。

良い

踏み込みが力強い…後脚が前脚より前にでるくらい踏み込まれているようであれば、気合が入っている証拠です。

前脚の出がスムーズ…後脚と同じ様に上体が柔らかい馬はリズミカルで、状態の良い証拠でもあります。

悪い

踏み込みが浅い…力強さがなく、トボトボ歩いている様な馬は少なくなくともいい状態とは言えません。腰や飛節に不安がある馬などに多く見られます。

歩様がぎこちない…いわゆる『コズミ』。筋肉が硬くなると前脚や肩の出が悪く、不自然な動きを見せます。周回する内に解消する場合もあるので注意が必要です。

気配

レース前のパドックにおいて、その馬に気合いが入っているか否かという点は、レースに直結する為、見逃してはいけない重要事項です。だが、内に闘志を秘め、気合いを表に出さないタイプの馬が存在する上、“気合いが乗っている馬”イレ込んでいる馬”を見誤ってしまう恐れがあるので、以下ではその違いを紹介します。

気合いが乗っている馬
手綱を引っ張るように周回

気合いが乗っている証拠。当然、プラス材料。

外側を周回

他馬より柵の近くを回り、前の馬を追い抜こうとしているようならなお良い。

一定のリズムで周回

一定のリズム歩けるというのは、落ち着いている証拠。

眼光が鋭い

目に力があり、真っ直ぐに前を向いている。集中している状態。

発汗

多少の発汗であればむしろ「好気合」と判断出来ます。

また、ジョッキーが跨ることでレースが近いことを悟り、気合いが乗るタイプの馬も存在します。逆に、気合いの足りない馬、元気のない馬は、歩様そのものから覇気が感じられず、その目はどことなくうつろ。厩務員に引っ張られているように歩いています。気合いが乗っているか否かの判断は、その全体的なシルエットで判断が可能です。

イレ込んでいる馬
つるっ首で周回

一見しただけでは厩務員を引っ張っているようにも見えるが、気合いが先行してしまっている証拠。プラス材料とは言えません。

首を上下に振って周回

その馬の癖であれば問題なし。但し

  1. 呼吸が乱れているかどうか
  2. 歩様が不規則であるかどうか
  3. 大量に発汗しているかどうか

の3点は要チェック。これらに当てはまるようなら、その馬はイレ込んでいます。

目はギラギラと血走っている

興奮している状態。このタイプの馬は、極度の興奮によりレースが始まる前に体力を消耗してしまう為、レース(特に中・長距離戦)では凡走する可能性大。

馬の気合いの入り具合と同時に目を向けて欲しいのが、馬の手綱を持っている厩務員です。彼らが普段とは違う服装をしていたり、小奇麗な格好をしていた場合、その馬が「そこで勝負をかける」可能性があります。というのも、以前とある厩務員が、「俺がオレンジの服を着ていたら勝負がかりだよ」と当社の情報ルートに耳打ちし、実際に彼がオレンジの服でパドックに現れたレースで、その担当馬が勝利を収めました。
馬と人間とは会話が出来ない為、完璧に馬の気配を読むことは難しい。上記の点を踏まえた上で、余計な先入観を持たず、その肌で各馬が発するオーラを感じ取るというのも手です。

馬体重

馬体重は前走や好走時と比べてどの位増減があるのかに着目し、その仕上がり具合を判断するひとつの要素。だが、本当に注意しなければならないのは増減の“数字”ではなく、増減の“内容”です。

確かに、コンスタントに使われていた馬が2桁単位で馬体を増やして出走してきたり、レース毎に馬体が減っている馬が出走していたりしたら、その調整過程に疑問符を投げかけたくなりますが、見た目が堂々としていて立派だと感じる場合は、その馬はむしろ好仕上がり。つまるところ、そこまで神経質になる必要は無いのです。体調の悪い馬というのは、出走している他馬と比較すればある程度察しは付きます。

馬も生き物なので、若駒の馬体が増えることや、夏場はスリムになり易く、冬場に多少目方が重くなることは自然な流れです。単純な数字の動きだけではなく、総合的に判断することが重要となります。

牡馬・牝馬の違い

牡馬

牡馬の状態を見極めるためのポイントは『トモの状態を知る事』にあります。これは、腰や後肢の筋肉がキッチリとついているのか、それとも削げ落ちて弱々しく見えるのかをしっかりと見極めるということです。他の部分が完璧に見えても、急仕上げの馬や状態が下降気味の馬はトモが寂しく見え、逆に、トモさえ良い状態を保っていれば力を出せる状態にあると判断できます。

また、牡馬特有の生理現象に“馬っ気”があります。これは馬が精神的に興奮してパニック状態に陥った時によく見られるもので、その現象が起こっているかどうかは一目見れば分かります。牝馬に反応して起こる現象でもあり、治まればさほどレースに影響はありませんが、パドックで馬っ気を出している馬を見つけたら注意が必要です。

牝馬

牝馬の状態を見極めるポイントは『腹回りの状態を知る事』にあります。腹回りが良い具合に絞れていながら、全体としては丸みを帯びた馬体をしている馬がベストコンディションであり、腹がボテッと映る馬や、腹が巻き上がってガレて見える馬は、稽古で体が絞りきれていないか、ピークを過ぎている恐れがあるので要注意です。

また、牝馬特有の生理現象に“フケ”があります。これは一般的に日照時間が長い3月~7月頃に見られる発情期であり、この現象が起こっている時は、殆ど場合好走は不可能と考えていいでしょう。ただし、牡馬の馬っ気とは違いフケは一目ではわかりません。多い兆候としては、厩務員に体をすりよせて歩いたり、尻尾の付け根をグッと上げて左右に振ったり、少し股を開き気味でガニ股歩行になっていたり、というものが挙げられますので、是非注視してみてください。

ボロにもヒント

パドックで見かけるボロ(馬糞)からは、その馬の体調を判断することが出来ます。ボロ自体は、馬がレース前に緊張することによって催すものである為、さほど気にしなくてよいのですが、注意して観察しなければならないのは、ボロの状態です。

一見すると状態が良さそうに見える馬でも、下痢気味なボロ(多少柔らかい程度のモノであればさほど影響はありませんが、完全に液状のボロ)をしている馬は、たとえ人気であってもその状態に疑問を抱くべきです。

また、下痢が見受けられなくても、股の内側や肛門に半液状の柔らかいボロが付着している馬(健康的なボロは、よほどの癖馬でない限り後肢に付着することはありません)は体調を崩している恐れがあるので、注意を払う必要があります。

しかしながら、上記のような状態でも短距離のレースでは押し切ってしまうケースもあるので、あくまで判断材料のひとつとして留めておいて下さい。